TAMRON / 70-180mm F/2.8 Di III VXDを購入&使用レビュー(2020.05.17)
(最終更新日:2021.05.02)
レンズ記事第4段は、注目のあのレンズ。そう、TAMRONが発売する『70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model . A056)』です
あれ?、ナナニッパ持ってますよね?
ですよね…そうなりますよね…
SONYのナナニッパといえば、SEL70200GM。2016年9月に発売された泣く子も黙るG Masterレンズですが、私も2017年春に購入してかれこれ3年使い込んでいます。
サーキットでは、お姉様方の撮影でバリバリ使っているし、ポートレート撮影でもバリバリ使っているし、しゃんしゃん祭でもバリバリ使ってます。なので、何気に2017年・18年・19年と3年連続で私の中の使用率レンズ部門でダントツの1位なんです(厳密に言えば、16年はF4通しのSEL70200G、15年はAマウントのTAMRON 70-200mm F2.8だったので、実質5年連続みたいなもの)。それだけ、私にとっての標準ズームレンズって感じなんですよね。
不満は大きさと重さ
その一方で、不満があったのも事実。それは、何を隠そう、やはり大きさと重さ。まあ、そもそも論として、「ナナニッパを持ち出す=大きさと重さは犠牲にする」というのが必然だったんですよね。
例えば、私が普段愛用しているHAKUBAのメッセンジャーバッグ。使い勝手が良くて、よく使うのですが、写真の通り、70200GMを入れようとするとボディ未装着でギリなんですよね。なので、もちろんカメラ装着状態で持ち運ぶことは不可能です。
最近ではSEL70350Gを購入したので、単純に望遠を使いたい場合はいいのですが、ちょっと人物を撮ることがあるかも…って時には、やっぱりナナニッパを持っていきたくなる。だけど、それだけでバッグも選ぶことになるし、荷物も重くなる。これって結構苦痛ではあるんですよね。
あとは、サーキットでもそうですよね。昨年、マシン撮影がSEL200600Gになったことで、そこの機材が大きくなった上に、グリッド用にSEL24105Gも持つようになったので、それだけでレンズが3本だもんな…。これを少しでも小さく軽く出来るなら…っていうのはありますよね。
満を持して登場してきた70-180mm F2.8
そこに登場してきたのが、TAMRONの70-180mm F2.8です。
TAMRONといえば、28-75mm F2.8がコンパクトさと軽量、そしてお値段で大ヒットしたのに続いて、17-28mm F2.8もヒット。そこに大三元を完成させるように満を持して登場してきました。
正直、発表された当初は、「どうせ安かろう悪かろうじゃないのかな?」なんて疑いの目で見ていましたが、続々と出てくる情報を見る限り、写りはいいし、AFも早いし、何なら純正のG Master倒すんじゃないか?という噂が出るなど、あまり否定的なレビューは目にしない状況に。
本当は、CP+で実機確認したいと思っていましたが、おそらくこのレンズは相当入手困難になるだろうという予想の元、予約して購入しました。
スペック比較
せっかくなので、G Masterと70-180mm F2.8の使用を比較してみました。
SONY SEL70200GM | スペック | TAMRON 70-180mm F2.8 |
70-200mm | 焦点距離 | 70-180mm |
34°-12°30' | 画角 | 34°21’-13°42' |
0.96m | 最短撮影距離 | 0.85m(Tele) |
0.25倍 | 最大撮影倍率 | 1:4.6(Tele:0.21倍) [MF]1:2(Wide:0.5倍) |
φ77mm | フィルター径 | φ67mm |
88mm | 最大径 | 81mm |
200mm | 長さ | 149mm |
1,480g | 重さ | 810g |
11枚 | 絞り羽 | 9枚 |
搭載 | 手ブレ補正 | 非搭載 |
対応 | テレコン | 非対応 |
TAMRONが小さいけど、テレ端短いし、手ブレ補正無いし、テレコン使えない。SONYはその逆…ってのは分かっているわけですが、改めて自分もスペックを整理すると分かった微妙なところ点が2つありました。
1つは、SONYとTAMRONで、ワイド端の70mmの画角が微妙に違っていて、TAMRONの方が21'ほど広いということ。まあこのあたりは実際に撮影して比較してみないと分かりませんが…。
あとは、マクロ性能。TAMRONのMF時のマクロ性能は置いておくとして、テレ端のマクロ性能においては、TAMRONが一見最短撮影距離は短いけど、180mmだし、最大撮影倍率0.21倍なので、SONYは最短撮影距離は長いけど200mmなので最大撮影倍率は大きいってこと。これも一様、実際に確認してみたい方がよさそうですね。
いざ開封!
それでは、いざ開封です。
単体で見ると、スゴい感動ってほどでもないけど、確かに小さいし軽い。
一方で、ちょっと気になるのは、プラスチッキーな点。これだけ軽いレンズなので、そこは致し方ないところではあるのでしょうが、現場で使い始めると、結構傷が付きまくりそうな予感。ズームリングもこんなに幅広くする必要あるかな?ってちょっと思ったりもしちゃう。
純正のSEL70200GMと比較するとこんな感じ。長さはスペック上でも約3/4。フードをつけてもフードなしの70200GMとあまり変わらないぐらいのサイズ感です。
なので、ボディを装着した状態でも70200GM単体よりも少し短いぐらい。つまり、言い換えれば、70200GMが入るスペースがあれば、ボディ装着状態で入れることが出来ちゃうってこと。
ちなみに、ズームを伸ばした状態でも70200GMよりも短いぐらい。まあ、テレ端が180mmなので、そうじゃないとおかしいんですけどね。
手持ちの他のレンズと比較をするとこんな感じ。SEL70350Gよりも少し大きく重い程度。私はもう手放してしまいましたが、SEL70300Gとほとんど同じぐらいとイメージです。
一番の良さはバッグを選ばないところ
このレンズのウリの大きな所は、やはり小型軽量であるという点。そんな中でも、先に述べたとおり、ナナニッパレンズを持ち出そうと思うと何かと制約があったのがバッグでした。
それが、70-180mm F2.8になると、ボディを装着した状態で普通にSEL70200GMよりも短いので、サクッとHAKUBAのショルダーバッグに入ってしまいます。
ほかにも、以前はよく使っていたLoweproのスリングバッグ(スリングショット202AW)。ナナニッパレンズだとボディ外した状態じゃないと入らなかったので、ナナニッパを使い始めた頃から使用頻度が落ちていたのですが、コイツにもボディを装着したまま入ってしまう。もう、これだけで、久しぶりにこのバッグで出かけたいって思ったもんな。
あとは、Enduranceのスリングカジュアルカメラバッグにもギリギリ入る感じ。サイドアクセスを使わなければ、縦位置グリップつけてもいけるぐらい。
近接テスト
とりあえず、試しに近接性能をテストしてみました。
ワイド端
ワイド端の70mmのAF時での両者の近接性能はこれぐらい。TAMRONだと26cmぐらいまでいけますが、SEL70200GMは30cmを越えており、Tamronの圧勝。
ちなみに、Tamronの方が、MF時にハーフマクロ的に使えるのもウリの1つ。実際、最小撮影長7cmぐらいなので、確かに最大撮影倍率1/2ぐらいにはなってます。
ただ、なかなか色収差が厳しそうな予感…。
テレ端
【180mm】
【200mm】
一方で、テレ端はスペック表を見ても感じていたとおり、それぞれのテレ端の焦点距離が違うものの、単純にどれだけアップで撮れるかという観点から見ると、テレ端時はほぼ同じだけど、ちょっとだけSEL70200GMの方が寄れる感じです。
【180mm】
【200mm】
すごい差ってほどでは無いんですけどね。やはり、微妙にSEL70200GMの方が寄れる印象です。
ワイド端の画角も微妙に違う
ここも、スペック的にも違いが現れていたところ。
この写真は、カメラの設置位置は動かさないまま、どちらも70mmのワイド端で撮影したものです(あえて、RAW現像せず、JPEG撮って出しをリサイズだけしたもの)。やはり、想定していたとおり、Tamronの方が少し広く映ることが分かります。
しかも、微妙にTamronの方が明るい
これも海外レビューでも言われていましたが、同じ設定で撮影をすると、Tamronの方が少し明るく映ります。下半分はまったく同じ設定で、レンズが違うだけなのですが、これだけ差が出ます。で、実際どれぐらい差があるかというと約1/3段ぐらいアドバンテージがある印象です。
画質も比較してみた
チャート表は、こちらのブログのものを利用し、手持ちのA3プリンターで印刷しました。普通紙に印刷しているので、細かいディテールは怪しいですが、同じ物を撮影しているので、画質の確認程度なら判断出来ると思います。
ワイド端
ちょっと横着をして、LightroomのXY比較のキャプチャー画面で申し訳ないです。いずれも、左がTamron 70-180mm、右がSONY SEL70200GMです。
先に述べたとおり、画角の差があるのはご勘弁下さい。私が見たレベルでは、ほぼほぼ互角か、SEL70200GMの方が少し良いかどうかという感じでしょうか。
ちなみに、F8に絞っても、センターはほぼ互角か、SEL70200GMって感じかな。
それが、周辺になると誰が見ても分かるぐらいTamonの方が明らかに良いです。これはもう時代の差なのかな…。
F8まで絞ると、70200GMがかなり改善されますが、それでもほぼ互角が、それでもTamoronの方が少し良いかどうかという感じでしょうか。
なので、私の評価をまとめると…
レンズ | F2.8 | F4 | F5.6 | F8 | |
Tamron 70-180mm | 中央 | 4.0 | 4.5 | 4.7 | 4.8 |
周辺 | 3.5 | 4.0 | 4.4 | 4.5 | |
SEL70200GM | 中央 | 4.1 | 4.5 | 4.8 | 5.0 |
周辺 | 2.3 | 2.5 | 3.5 | 4.0 |
完全に私の主観での判断なので、あくまで参考までに…という感じですが、やはり開放から周辺がある程度来るTamronに対して、70200GMは中央は同等か若干アドバンテージがあるかどうかといった印象。ちなみに、70200GMの周辺が許容範囲になるのは、F5.6あたりからですね。
テレ端
続いてテレ端側です。
テレ端こそ180mmと200mmで明らかに違うのでなんとも評価が難しいのですが、評価をするとこんな感じ。
レンズ | F2.8 | F4 | F5.6 | F8 | |
Tamron 70-180mm | 中央 | 4.0 | 4.1 | 4.3 | 4.5 |
周辺 | 3.0 | 4.0 | 4.1 | 4.5 | |
SEL70200GM | 中央 | 3.5 | 4.0 | 4.3 | 4.5 |
周辺 | 2.3 | 3.0 | 3.3 | 3.5 |
やはり、周辺はTamronの方が終始良いのはワイド端と同じ傾向ですが、中央についてもTamronの方がやや良いような印象です。といっても、70200GMがダメってことは無いんですけどね。とはいえ、周囲の差は如実に表れてくるという印象です。
実写レビュー
取り急ぎ撮りに行けたのがカキツバタだったので、その写真をアップしておきます。っていうか、何気にF2.8レンズで花撮ったのって、イルミネーション絡み以外だとはじめてかも。
正直な話、適期を1週間過ぎた感じで、花の状態はあまり良いとはいえませんでしたが、なかなかいいですね。というか、レンズどうこうの前に、これぐらいの焦点距離でフルサイズ開放F2.8での撮影はピントがメッチャシビアです。改めて帰宅して確認したら、まあピント位置がズレてて焦りました…。
それにしても、このボケの柔らかさはいい感じです。その一方でピントが来ているところはかなりシャープ。そして、緑の発色もスゴい良くて、これだとあれこれ花を撮りに行きたくなる感じ。手ブレはちょっと心配してましたが、屋外でこれぐらいのシャッター速度なら問題ないですね。夜に、焦点距離分の1ぐらいで使うとどうなのかな?。
サーキット使用
コロナ禍ということで、本来の使用目的ともいうべき、サーキットでのRQ撮影にまだ十分に使えていないのですが、とりあえずご紹介しておきます。
86/BRZ Race 2020 & MINI CHALLENGE JAPAN 2020 at 岡山国際サーキット
今回、足を運んだのは86/BRZ RaceとMINI CHALLENGEを含むOKAYAMAチャレンジカップレース。どちらかといえば、マイナーレースの部類に入るし、正直、翌週にはSUPER GT鈴鹿戦、さらにその翌週にはS耐岡山戦と続くため、そんなに無理して行くほどでなかったのですが…
これは、2020年に唯一と言ってもいいグリッドに入ることが出来たMINIのレースでのグリッド撮影。
134mm
91mm
色のノリといい、背景のボケ感といい、逆光の雰囲気も全然申し分ない感じです。ただ、唯一気になるのは、レンズ側に手ぶれ補正機構が無い分、気を抜くと手ブレしやすいというのが気になるところです。(もしかしたらシャッター速度の影響もあるかもしれないですが…)
それにしても、逆光でもバッチリです。
マシン撮影も出来なくはない
実は、このMINIのレースのときに、マシン撮影もチラッとしています。
あくまで一脚無しの手持ち撮影だし、APS-Cクロップもしているので何ともいえないですが、まあ撮れなくはないってところです。一様参考までに、α7RIVは手ぶれ補正はオンにしていたみたいです。
紅葉撮影
紅葉2020 at 奥津渓谷
今や、サーキットカメラマンと化している私ですが、元々、カメラを始めて数年は風景写真がメインでした。そんな私も、当時は紅葉の撮影に毎年のように足を運んでいたのですが、ここ数年は全く行けてませんでした。
そして、2020年、コロナ禍もあったりしましたが、何か久しぶりに紅葉を撮りたいなぁと思って、脚を運んだのが今回の奥津渓谷でした。
続いては紅葉撮影のときの一コマ。
F2.8ならではの背景の柔らかいボケはなかなかいいですね。
丸ボケも厳しすぎず、たまねぎの雰囲気もなく、なかなかいい感じではないでしょうか。
イルミネーション撮影
フラワーイルミネーション in とっとり花回廊 2020
コロナ禍で何もかにも中止に追い込まれた2020年。それは、年末のイルミネーションシーズンにもいくらか影響を与えていて、鳥取だと近年恒例だった鳥取砂丘イリュージョンが早い段階で中止が決まっていました。
さらに、コロナ感染者が増える中で、活動自粛云々が叫ばれる中…
そして、丸ボケといったらイルミネーション撮影。
フィルター径が小さめなので、厳しいだろうなとは思っていましたが、やはり口径食はなかなか厳しめです。しかも、玉ネギボケがメッチャスゴイです。
派手にボカすと、口径食もたまねぎボケもだいぶん軽減される感じはあるんだけどな…。
とはいえ、やはりたまねぎボケの傾向は残りますね。こう見ると、イルミネーションに関してはまだ70-180mmよりも、70200GMの方が優れているかも。
G MasterとTAMRONの使い分けは可能か?
で、問題はここですよね。
普通の人なら、TAMRONを買ったら、G Masterは売ってしまうという方がほとんどではないでしょうか。ただ、私は今のところは、両方とも持ち合わせた状態で使い分けを行う形になると思います。
G Masterの良いところ | 70-180mmの良いところ |
・手ブレ補正搭載 ・インナーズーム ・堅牢さ ・テレコン使用で98-280mm F4、140-400mm F5.6に ・三脚座が使える(速射系ストラップが使いやすい) |
・とにかく軽快さを確保したいシチュエーション ・カバンを選ばない |
というのも、やはりG Masterにはそれはそれで良いところもいくつもあるってところ。
例えば、インナーズーム。操作性という面もありますが、特にレインカバーを付けた状態の時って、インナーズームっていいんですよね。なので、小雨ぐらいだと開き直って70-180mmってのもあるかもしれませんが、まとまった雨が降っていて…となると、G Masterにレインカバーを付けて撮影というスタイルになりそうなんですよね。
あと、テレコンが使えるというのも結構大きいです。2倍テレコンが実用的かどうかという問題もありますが、1.4倍テレコンなら、98-280mmなので約300mm弱までカバー出来るので、ナナニッパと200-600mmの間を埋めるポジションにもなってくれます。しかも、私の場合、サーキットでギャルオンとかを撮影するのに、この280mmまで撮れるかどうかって地味に大きいんですよね。
手ブレ補正もそう。私自身、少し忘れていて、「これだけ小型なら、APS-C機で使うのもいいかも…」って思ったけど、α6400だとボディ内手ブレ補正が無いから、結構厳しそう。厳密に言えば、フルサイズで使う場合でも、レンズにも搭載されていた70200GMとは差が出る可能性も。この辺りは、実際に使ってみながらじゃないと分からないところかも。
なので、たぶんしばらくは、メインでこの焦点距離を使って撮影していく場合は70200GMを使いながら、少しでも軽量に…っていう時はこの70-180mmという使い分けになっていきそうです。